変形性股関節症

Hip Osteoarthritis

変形性股関節症

変形性股関節症とは?

変形性股関節症(Osteoarthritis of the hip, Hip OA)は、股関節(大腿骨頭と骨盤の寛骨臼が接触する関節)の軟骨が徐々に磨り減り、変形していく変性疾患です。軟骨が減少することで、骨と骨が直接接触し、痛みや関節の可動域の制限が生じます。長期にわたって進行すると、関節の機能が低下し、日常生活に支障をきたすことがあります。
また、痛みにより歩行を行わなくなる事でさらなる筋力低下を招き、転倒・骨折などから寝たきりにつながる場合も多くある病気です。

変形性股関節症の原因は?

年齢:加齢に伴って、軟骨の水分や栄養素が失われ、軟骨が劣化することが原因となります。

遺伝的要因:家族歴や遺伝的要因も関与することが示唆されています。骨格の異常で姿勢がみだれたり脚長差(足の長さ)がちがったり、足の骨の姿勢がくずれていたりする場合にも股関節に負担をかける場合があります。

肥満:体重が重いほど、関節にかかる負担が大きくなり、軟骨の劣化が早まります。

過去の怪我や炎症:過去の怪我や炎症が原因で、関節の構造や機能が変化し、変形性股関節症が発症しやすくなります。

職業的要因:重労働や立ち仕事など、股関節に長期間負荷がかかる職業に従事している人は、変形性股関節症のリスクが高まります。

症例

変形性股関節症の検査には以下のようなものがあります。

診察:痛みや可動域の制限、筋力低下、歩行異常などを評価します。

血液検査:炎症反応やリウマチや膠原病による変形でないかを調べます。

レントゲン:股関節の形状や骨の密度、軟骨の状態を評価します。

MRI:骨や軟部組織の詳細な画像を取得し、骨や軟骨、関節唇、靭帯などのの異常を評価します。

CT:3次元の股関節の画像を取得し、手術に必要な情報を提供することができます。

関節液検査:炎症の程度や関節内の状態を評価するため、関節液を採取して検査することがあります。

変形性股関節症が進行した場合のリスク

変形性股関節症が進行すると、以下のようなリスクや問題が生じることがあります。

慢性的な痛み: 股関節症が進行すると、痛みが慢性化し、日常生活や睡眠を妨げることがあります。痛みが強くなると、歩行や立ち上がりなどの動作が困難になることもあります。

関節の可動域制限: 股関節の軟骨がさらに損傷されると、関節の可動域が制限され、柔軟性が低下します。これにより、屈曲や回旋などの動作が難しくなり、靴下を履く、爪を切るなどの日常生活に支障が出ることがあります。

筋力低下: 股関節の痛みや可動域制限により、周囲の筋肉が使われなくなり、筋力が低下します。筋力低下は、関節の安定性を損ね、歩行障害が生じて、さらなる関節の損傷や痛みを引き起こすことがあります。

変形や変位: 重度の変形性股関節症では、関節の骨構造が変形し、大腿骨頭や寛骨臼の変位が生じることがあります。これにより、歩行時のバランスや安定性が悪化し、転倒のリスクが高まります。

生活の質の低下: 痛みや可動域制限、筋力低下などが重なることで、生活の質が低下します。趣味やスポーツを楽しめなくなったり、家族や友人との交流が減ったりすることがあります。

合併症: 関節症が進行すると、他の関節への影響や骨折、脱臼などの合併症が起こることがあります。

変形性股関節症の治療方法

変形性股関節症の治療方法は、症状の程度や原因によって異なりますが、一般的には痛みの管理、運動療法、体重管理、補助具の使用、薬物療法などが行われます。症状が重度で、保存療法が効果がない場合は、関節置換術(股関節全置換術術)が検討されます。

保存療法(手術しない治療法)

治療の目的は、痛みの軽減、関節機能の改善、進行の遅延、および生活の質の向上です。

 薬物療法:痛み止め(鎮痛剤)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されることがあります。これらの薬は、痛みや炎症を軽減し、日常生活を楽にします。

歩行解析を前提としたリハビリテーション:理学療法士による指導のもと、筋力を向上させ、関節の可動域を維持・改善するための運動療法が行われます。歩行解析を前提に股関節への負担を軽減するために必要な筋肉や関節可動域を検査して、歩行パターンを変更することや筋力の増加により治療を行います。当院では自費リハビリテーションによる治療を提供しています。

装具療法:医療用インソール(オーソティックス)などを使用することで、関節への負担を軽減し、痛みの緩和を図ることができます。膝の状態に合わせた関節ポジションに骨格を矯正し、また体重を支える硬度のある固い装具が必要になります。

注射療法:関節内に直接ヒアルロン酸やステロイドを注射することで、痛みを軽減し、関節機能を改善することがあります。

手術療法

保存療法の効果がない場合は、手術が検討されます。手術は、保存療法(痛み止め、理学療法、運動療法など)が効果を示さない場合や、症状が重度で日常生活に大きな支障をきたす場合に行われます。手術は、股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty; THA)や骨切り手術、関節鏡手術があります。

股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty; THA):この手術では、股関節の損傷した部分をすべて取り除き、人工関節に置き換えます。人工関節は、通常、チタンなどの金属や高分子プラスチック、セラミックなどの素材で作られています。全置換術は、痛みの軽減や関節機能の改善が期待できる治療法です。

骨切り術:臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)の方で、股関節の変形が軽度であるものの痛みがある方に対して、関節を温存して、骨切り手術で痛みを緩和し、将来的に人工関節になる危険性を減らすことが出来ます。

関節鏡手術:大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)や股関節唇損傷などに対して、関節鏡手術で骨を削ったり、関節唇の修復を行う手術です。手術は関節鏡で行うため、皮膚の傷も少ないですが、軟骨障害や変形が少ない方に限られます。

手術の適応や手術方法は、患者の年齢、一般的な健康状態、関節症の程度、患者の活動レベルなどによって異なります。手術にはリスクも伴いますので、患者と医師が十分に相談し、手術の利点とリスクを総合的に判断して決定することが重要です。人工関節の寿命は限られているため、将来的には再手術が必要になることもあります。
当院では関節置換術はおこなっておらず提携医療機関を紹介させていただいていますが、手術後のケアやフォローについては当院で最後まで責任をもって対応させていただいています。

手術後は、リハビリテーションが重要な役割を果たします。適切なリハビリテーションにより、関節の可動域や筋力が回復し、歩行や日常生活の動作が改善されます。また、手術後の経過観察や定期的なフォローアップが必要です。

リハビリテーションによる改善効果

変形性股関節症は関節の変形や、痛みなどの影響で、だんだんと股関節の動く範囲(可動域)が狭くなったり、股関節の周りにある筋肉が弱くなってしまうことで、歩くことが難しくなったり、立ったり座ったりする動作が難しくなります。そのため、股関節の可動域を広げる運動や、ストレッチングを行うことが重要となります。加えて、股関節の周りにある筋肉でも、大殿筋や中殿筋といったお尻の筋肉を強化することで股関節を安定させたり、姿勢を改善することで、痛みなどの症状の進行を遅らすことができます。それ以外にも、膝関節の周辺の筋肉である大腿四頭筋や、足くびの関節の柔軟性の改善、扁平足などの足の変形の改善も重要となります。

日常でできる予防対策

体重管理

股関節にかかる負担を減らすため、適切な体重を維持することが重要です。必要に応じて、栄養士と相談することも重要です。

杖の使用

股関節への負担を軽減するために、杖を使用して歩行することで痛みが軽減する事ができます。

大殿筋・中殿筋の筋力トレーニング

お尻の筋肉である大殿筋や中殿筋をトレーニングすることで、股関節の安定化や、姿勢の安定化が得られ、痛みの軽減や歩きやすくすることができます。

具体的には、仰向けに寝て、両方の膝関節を曲げて、膝を立てます。そこから、お尻に力を入れながら、ゆっくりとお尻を床から離します。拳2〜3個分程度持ち上げたら、5秒間止めて、ゆっくり下ろします。このとき、背中が反ったりしないように注意してください。

股関節を開く・曲げるストレッチ

股関節の柔軟性を改善することで、関節が動かしやすくなり、痛みを軽減したり歩きやすくなります。具体的には、仰向けに寝て、両方の膝関節を曲げて、膝を立てます。そこから片方の太ももを手で持ち上げながら、太ももを胸の方に近づけて行きます。このとき、足の力は抜いてください。また、痛みのない範囲で行うことが重要です。

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