フレイル

Frailty

フレイル

フレイルとは?

フレイルとは、日本老年医学会が提唱する、要介護状態に陥る前段過程で、身体的問題、精神・心理的問題、社会的問題を含む 概念を指す言葉で、適切な介入によって、フレイルから健全な状態に戻ることが可能とされている状態を言います。フレイルは、もともとはFrailityという言葉がLinda Friedによって定義され、Fried氏の基準によれば、以下の5つのうち3つ以上該当するとフレイル、1~2つ当てはまるとプレフレイルとされます。

✓体重の減少:意図せず、年間4.5kgまたは5%以上の体重減少がある

✓疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3~4日以上感じる

✓歩行速度の低下

✓握力の低下

✓身体活動量の低下

歩いていて、若い人に抜かれていくなというように感じたらフレイル症状がはじまっていると考えてよいです。フレイルはすぐに気づいて対策することで元の状態に戻す事ができます。老化と思わずにすぐに受診するようにしてください。

フレイルの原因は?

フレイル症状は、加齢に伴う身体機能の低下が原因とされています。特に、筋力、身体能力、バランス、認知機能の低下が見られます。これらの要因が重なることで、身体機能が低下し、簡単な日常生活動作も困難になってしまう状態が引き起こされます。また、疾患や病気、栄養不良、社会的孤立などもフレイル症状の原因となることがあります。

フレイルの人の特徴です。

筋力低下:筋肉量が減少し、筋力が低下しています。

機能低下:身体機能が低下し、日常生活の動作が困難になります。

栄養不良:栄養状態が悪化し、体重減少や筋肉量の減少が見られます。

疲労感:疲れやすく、エネルギー不足を感じることがあります。

夜目が覚める:夜間に何度も目が覚め、熟睡できないことがあります。

身体のバランスの悪化:歩行時に身体のバランスが崩れやすく、転倒しやすい傾向があります。

症例

フレイルは、通常の生理的な老化や病気と区別するための明確な検査方法は存在しません。しかし、次のような指標が使用されることがあります。

体力測定として、歩行速度、手指運動能力、手の握力、座位から立位への移行の検査

栄養状態として、BMI(体重指数)、アルブミンやトランスフェリンなどの血液中の栄養素レベルの検査

認知機能として、記憶力や思考力などの認知機能の評価などを検査します。

当院ではJ-CHS基準による評価を行っています。
J-CHS基準は、日本老年学会が提唱した高齢者のフレイル(虚弱)の診断基準であり、以下の3つの要素から構成されています。

筋力の低下(手持ち力、握力)

歩行速度の低下

疲れやすさ(日常生活動作や運動後の疲れやすさ)

これらの要素を総合的に判断し、2つ以上の要素が該当すればフレイルの診断が可能とされています。J-CHS基準は、高齢者の健康管理や予防に役立つことが期待されています。

フレイルが進行した場合のリスク

フレイルが進行すると、次のようなリスクがあります。

転倒や骨折のリスクが高まる:筋力やバランスが低下するため、転倒や骨折のリスクが高まります。

機能低下や依存度の増加:身体能力の低下により、自立した日常生活ができなくなり、介護が必要になる場合があります。

病気や怪我に対する免疫力が低下する:免疫力が低下するため、感染症や怪我に対する回復力が弱くなります。

他の健康問題のリスクが高まる:フレイルは、心血管疾患、認知症、糖尿病などの健康問題と関連しています。フレイルが進行すると、これらの疾患のリスクが高まります。

フレイルは、早期に発見し、適切な対策を取ることが重要です。日常生活での運動や栄養バランスの良い食生活など、フレイル予防につながる生活習慣を取り入れることが必要です。

フレイルの治療方法

保存療法(手術しない治療法)

歩行解析を前提としたリハビリテーション:理学療法士による指導のもと、筋力を向上させ、関節の可動域を維持・改善するための運動療法が行われます。歩行解析を前提に股関節への負担を軽減するために必要な筋肉や関節可動域を検査して、歩行パターンを変更することや筋力の増加により治療を行います。
当院では自費リハビリテーションによる治療を提供しています。

当院の自費リハビリテーションによる治療では40%以上の方がフレイル、プリフレイルから正常の状態に戻っています。

装具療法を併用した歩行改善:医療用インソール(オーソティックス)などを使用することで、関節への負担を軽減し、痛みの緩和を図ることなどで歩行不安を改善したうえで、医師と一緒に歩行計画を立案し、毎日の歩行距離を延ばす治療方法があります。歩行不安をなくしバランス力を取り戻すための装具は体重を支える硬度のある固い装具が必要になります。

手術療法

フレイルは高齢者に多く見られる状態であり、身体的な機能が低下しているため手術のリスクが高くなることがあります。そのため原則フレイルに対して手術療法は選択されませんが、別の疾患で手術が必要な場合があります。

リハビリテーションによる改善効果

フレイルには、リハビリテーションが効果的です。フレイルにおけるリハビリテーションでは、主に、関節を柔らかくし、筋力をつけながら、バランストレーニングや歩行動作を行います。このとき、フレイルの状況やそれ以外の身体状況に適した運動方法や量を実施しないと、体の痛みなどを引き起こしてしまう点に注意が必要です。

関節可動域練習

フレイルを改善するために行う運動や、歩行を行いやすくし、怪我や痛みの予防をするために行います。身体の関節の柔軟性を高めて、運動しやすい身体を作ります。

筋力強化トレーニング

筋力をつけることは、フレイルの改善や、予防に大切です。特に、足やふくらはぎ、ふともとも、お尻の筋肉は、全身の中でも大きい筋肉であるとともに、立つ、座る、歩くなど普段の生活に欠かせない動作の土台となります。そのため、脚の筋肉を鍛えていくことが重要になります。ただ、急に強い負荷をかけると怪我や痛みが生じやすく、逆に負荷が弱いと、効果が少なくなってしまいます。そのため、専門家に相談の上、個人の状況に適した運動を行うことをおすすめします。

バランストレーニング

フレイルの状態になると転びやすくなります。転倒によって怪我をすると、寝たきりや介護が必要な状態になりやすいです。そのため、関節可動域や筋力を改善するだけでなく、全身のバランストレーニングが必要です。

歩行運動

歩くことは、フレイルの改善や、予防に効果的です。しかし、歩き方や量が適切でない場合、痛みが生じたり、怪我をしてしまう場合があります。そのため、個人の身体の状況に合わせた、正しい歩き方や歩く量を守って歩行を行うことがおすすめです。

日常でできる予防対策

適度な運動

筋力トレーニング、有酸素運動など適度な運動は、筋力やバランスの改善につながり、フレイル予防に役立ちます。

歩行の継続と維持

日8000歩を目指して、痛みや不安がないことを前提に歩行を維持することが重要です。

健康な食生活

バランスの良い食生活を心がけ、たんぱく質やビタミンD、カルシウムなどを十分に摂取することで、筋肉や骨の健康を維持できます。

社会的なつながり

社会的なつながりを持つことで、ストレスを軽減することができます。また、趣味やスポーツなどに取り組むことで、健康的な生活スタイルを維持できます。

転倒予防

フレイルのリスクを高める転倒を予防することが重要です。転倒防止のためには、適切な靴や床の滑り止め処理などが有効です。また、装具療法が必要な方は治療が必要です。

定期的な健康チェック

定期的に健康チェックを受け、早期に異常があれば治療を受けることが大切です。定期的な健康チェックは、健康状態を把握し、フレイルの予防に役立ちます。

 

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