シニア世代に起こりやすい足病

年齢と足病の関係

年齢と足の病気には密接な関係があり、加齢に伴って足の構造や機能が変化し、さまざまな足の病気や問題が生じることがあります。

  1. 関節の摩耗
    加齢により関節の軟骨が徐々に摩耗し、炎症や関節変形が生じる。膝や足首などの関節が影響を受けることがあります。ヒトは毎日歩きます。舗装された固い地面でなんのクッションや支えもない足元で歩くことで関節が摩耗、すり減っていきます。
  2. 筋肉が固くなる
    加齢により筋肉が硬くなり、炎症が生じることがあります。
  3. 血流がおとろえる
    加齢や高血圧、糖尿病などにより動脈硬化が発生しますが、足の血管もつまってしまいます。これにより足の血流が悪くなり、痛みが生じたり、場合によっては壊死になったりします。
  4. 骨の変形
    足指の関節が曲がり、変形する状態です。長時間の立ち仕事や不適切な靴の使用が原因となることが多いが、加齢による足の筋力低下や関節の変化から徐々に変形していきます。骨は筋肉が支えており、筋力が低下することにより骨の変形が進んでいきます。
  5. 爪の変形・変色
    加齢に伴い、足の爪が厚くなったり、変色したりすることがあります。これは、真菌感染や循環障害、栄養不足などが原因であることもあります。
  6. 関節リウマチ
    自己免疫疾患であり、これによって関節炎が引き起こされます。加齢により免疫システムが変化し、関節リウマチの発症リスクが高まることがあります。
  7. 糖尿病性足病変
    糖尿病患者が神経障害や血流障害を引き起こし、足の感覚消失や潰瘍、感染などの問題が発生する場合があります。糖尿病は加齢とともに発症リスクが高まる疾患であり、足の病気と深く関係しています。

シニア世代に起こりやすい足病・症状

サルコペニア

サルコペニアは、加齢に伴って筋肉量が減少し、筋力や筋機能が低下する現象を指します。サルコペニアは主に高齢者に見られる症状で、日常生活や運動能力に影響を与え、転倒や骨折のリスクを高めることがあります。

フレイル

フレイル(frailty)とは、日本語では虚弱状態のことをいいます。加齢に伴って生じる身体機能の低下により、健康状態が不安定になり、外的ストレスに対する耐性が低下した状態を指します。フレイルは、高齢者の自立した生活を脅かす要因となり、転倒や骨折、入院、寝たきりなどの直前の状態ですが、一方で、健康状態に戻ることも可能な状況です。したがって、フレイルを予防することも大切ですが、フレイルであってもリハビリテーションなどで健康状態に戻すことも可能です。フレイルの判断には握力や歩行速度が用いられます。加齢により握力の低下や歩くスピードが遅くなったらフレイルやフレイルの前段階にあるプレフレイルの可能性があります。

関節炎

加齢により関節の軟骨がすり減ることで、関節炎が発症します。足の関節(特に足首やつま先)や足の甲などに痛みや腫れが現れることがあります。

ハンマートゥ

足趾の関節が曲がり、変形する状態。長時間の立ち仕事や不適切な靴の使用が原因となることが多いですが、糖尿病の神経障害や加齢による足の筋力低下や関節の変化も影響します。

間欠性跛行:足の虚血、脊柱管狭窄症

間欠性跛行(Intermittent claudication)とは、動脈硬化によって下肢の血流が悪くなることや脊柱管狭窄症によって脊髄が圧迫されることで、歩行時に下肢(主にふくらはぎ)の痛みやけいれんが生じる症状です。動脈硬化は、動脈の内側にプラーク(脂質や石灰化物質の堆積物)が形成され、動脈の内径が狭くなることで血流が低下します。これにより、筋肉に十分な酸素や栄養が届かず、痛みやけいれんが引き起こされます。安静時では痛みがなく、運動時に痛みが生じるのは、運動によって筋肉が必要とする酸素の量が増えるため、血流が低下していることで相対的に酸素不足になることが原因です。

6分以上連続して歩けない、足が痛くなって休むとよくなる場合は間欠性跛行の状態になっています。

外反母趾

年齢とともに足の筋肉や靱帯が弱くなることで、母趾の付け根が外側に曲がる症状が現れることがあります。痛みや歩行困難を引き起こすことがあります。

足底腱膜炎

足底腱膜が炎症を起こし、かかと周辺に激しい痛みを感じる症状です。主に、扁平足や凹足などの足部変形が影響していると考えられています。また、加齢による体重の増加や筋肉の衰えが原因となることがあります。

アキレス腱炎

アキレス腱に炎症が起こる症状で、痛みや腫れを引き起こします。これらも、扁平足や凹足などの足部変形が、関節の動揺や一方向へのぐらつきを生み出すことで、アキレス腱にストレスを加えることで発生する場合があります。

関節リウマチ

免疫システムの異常によって関節炎が引き起こされる病気で、足の関節や足趾に痛みや腫れが現れることがあります。

骨折

加齢による骨密度の低下や骨粗しょう症が原因で、転倒などで足の骨が骨折しやすくなります。

シニア向けの足病予防法

適切な靴選び

シニアの方は履きやすく、ぬぎやすいつっかけやサンダルを履くのを好む方が増えてきますが、こういった靴は骨の変形を助長し、関節炎のリスクを高めるため適切ではありません。
シニアの足元は加齢により筋力が低下している事や衝撃を吸収するための脂肪がへっていることからクッション性のあって、歩行しやすく、かかとがしっかりした靴を選ぶことが重要です。また、靴の中で足が動いて傷や胼胝(たこ)をつくらないためにも、靴紐をきちんとしめることが重要です。

靴を選ぶ際は適切なサイズや幅を選ぶことが重要です。

骨が変形してしまっている場合も大きいぶかぶかの靴を履くのはむしろリスクを高めます。また骨格矯正を装具療法で行う事で筋力が少なくても無理なく歩くことができる場合があります。適切な靴がわからない場合、歩きにくい、歩く速度が遅くなった時はすぐに当院に相談ください。

フットケア

男女ともに、定期的なフットケアが重要です。足裏の角質ケアやマッサージ、ストレッチなどで、足の筋肉や靭帯を柔軟に保ち、病気の予防に役立てます。皮膚が固い部分は胼胝(たこ)ですので、削ることも重要ですが、原因となる骨格異常を治療することが重要になります。→フットケアはこちら

筋力トレーニング

筋肉を鍛えることで、骨の変形やフレイル、サルコペニアを予防することができます。特に女性は、体幹や下肢(股関節、膝関節、足部)の筋力を鍛えるエクササイズが必要です。また、毎日の歩行を計画して8000歩を目標に歩くことが重要です。

足のストレッチ

加齢によって筋肉や筋肉とつながる腱や靭帯は固くなってきます。これらの関節可動域は動かさないとどんどん固まるものであり、できるだけ動かすようにストレッチを毎日行う事がシニアでは特に重要です。

生活習慣病の治療

生活習慣病のうち糖尿病や高血圧にともなう動脈硬化は筋肉へ血液を送る力を損ない、歩くときの痛みに変わったり、逆に神経障害を引き起こし、足の感覚をなくしてしまう可能性があります。生活習慣病を進行させて腎不全となり透析の状態となると足病を多く合併して併発し、足を切断したり歩行を失うリスクが交通事故より高まることがわかっています。

生活習慣病の治療、予防は足を守るうえで大変重要になります。

体重管理

適切な体重を維持することは、足の病気の予防に役立ちます。体重が重くなるとその分、地面から帰ってくる力である床反力が増え、足や関節に大きな負担を与えます。

足への圧力を放置することで、骨格の状態によっては足趾がまがってきたり、外反母趾や内反小趾といった骨の変形が進行します。

定期的な医療チェック

早期発見・早期治療が足の病気の予防や治療に役立ちます。男女ともに、定期的に医療機関でのチェックを受けることが大切です。足は毎日観察して違和感や胼胝(たこ)ができたら足病のサインですので受診の目安です。痛みを覚えてから受診をするのは、虫歯を放置して虫歯が傷んでから歯医者にかけこむようなもので、予後に影響します。

最後に

シニアになるとこれまでの筋肉や関節へのダメージが足病や痛み、疲れやすい、しびれの症状となって足や歩行の問題となってあらわれてきます。

シニアの方のほとんどで爪の変形や足の裏に胼胝(たこ)がある状態になっているとかんがえられており、この原因は関節の異常や骨格の変形が進行した結果によって引き起こされています。できる早いタイミングで姿勢や骨格の変化をつくらないことはその後の足と歩行の維持に大きな影響を与えます。
痛みを感じていないからと病院受診をせずに慢性的な痛みを放置すると、最終的には大きな手術によって治療を行う以外治療方法がなくなり、さらに高齢になると手術を行うリスクが高くなることから手術すらも行えなくなります。

その時になってから歩行を維持することは困難で、歩行障害の末期障害となり、生活の質を大きく落とすことになります。

手術を行うと、歩行を取り戻すにはつらいリハビリテーションが必要になります。小さい痛みや胼胝(たこ)の段階で治療をしなかったことで歩行を失う可能性あるということは決して大げさな話ではありません。歯医者でたとえれば、虫歯や歯周病を痛くないからと放置をすれば歯そのものをなくしてしまうことは子供でも理解している事実であり、足も同様です。
シニアの足のトラブルは医療的な介入が必要な場合が多く、早期に介入することが重要で、適切なケアをすることで足は健康を維持しずっと歩行を維持することが可能になります。死ぬその瞬間まで歩行を失わない方も多くいます。そういった方は遺伝的に素晴らしい骨格をもって生まれてきていたり、適切な運動や食事、生活などをしていたりしています。逆にご両親などで寝たきりになった家族がいる場合には、その子供であるあなたも一定の確率で同様の病気や骨格異常が遺伝されている可能性があります。

足の問題は遺伝の問題でもありますので、家族そろっての受診をお勧めいたします。

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