再生医療とは、幹細胞を用いて、加齢、怪我、病気等で失われた身体の機能・組織の修復や置き換えを目指す医療です。
再生医療には、失った臓器や組織を、幹細胞を用いて再現し、機能の置き換えを目的とする再生医療と、体外で加工・培養された細胞の投与により、人間が本来持っている免疫力・自己修復機能を高め、疾病の対処・予防等を目的とするものと2つがあります。後者の、人間が本来持っている免疫力・自己修復機能を高めるための再生医療については、「細胞治療」とも言います。
再生医療とは以下の通りです。
・加齢や疾患等により、失った臓器や組織そのものを修復・再現を目的とする再生医療
・体外で加工された自家・他家由来等の細胞の投与によって身体の免疫力・自己修復機能を高め、疾患を対処・予防を目的とした再生医療(細胞治療)
幹細胞を用いて臓器や組織の再現を試みる再生医療では、万能性を持つES細胞やiPS細胞が用いられます。現段階では臨床的に細胞を用いた治療の提供がはじまった段階で、言葉のイメージに
ある組織を再生するような再生医療はまだまだ研究段階にあります。
そのため、現段階は自己修復機能を高めたり、免疫機能を調整する治療方法という事になります。現時点で関節損傷した方の関節が元通りに再生するような事は原則ありません。
iPS細胞をはじめとする幹細胞を用いた再生医療・細胞治療(以下、再生医療等)を安全かつ早期に実現すべく、2014年に再生医療等安全性確保法が施行されました。
再生医療等において、用いる細胞の種類や加工・培養法などにより、幹細胞の持つ性質と分化能・増殖能等が異なり、それが人間にもたらすメリット・デメリットもすべてが解明されているわけではありません。
そのため、この法律では再生医療のリスクに応じて基準が設けられています。
健康リスクに応じた再生医療等の分類
・第1種再生医療等・・・ヒトに未実施など高リスク(ES細胞、iPS細胞)
・第2種再生医療等・・・現在実施中など中リスク(体性幹細胞等)
・第3種再生医療等・・・リスクの低いもの(体細胞を加工等)
参考:厚生労働省.“再生医療等の安全性の 確保等に関する法律について"
細胞から得られるサイトカインやエクソソームを含む培養上清液を利用する治療は日本国内においては再生医療等の安全性の 確保等に関する法律で定義される再生医療にはあたりません。
米国などでは細胞から得られるサイトカインやエクソソームを用いた医療を再生医療として定義を行っており、広義には再生医療に含まれると考えられています。
ES細胞やiPS細胞を用いる再生医療とは別に、人間の免疫力や自己修復機能を高める細胞治療では、ヒト体性幹細胞(間葉系幹細胞)などが用いられます。
間葉系幹細胞(MSC)が持つパラクライン効果や、細胞から放出されるサイトカイン、最近ではエクソソームといった細胞が放出する顆粒状の物質等による免疫調節機能で、体内の炎症箇所の沈静化、傷ついた細胞の修復といった抗老化のほか、病気の重症化予防や再発予防、発症予防にも役立つと期待されています。
また、PRP療法も細胞治療の一つであり、日本でも多くの医療機関にて2種または3種再生医療として提供が行われています。
幹細胞から放出されるサイトカイン、最近ではエクソソームといった細胞が放出する顆粒状の物質等による免疫調節機能で、体内の炎症箇所の沈静化、傷ついた細胞の修復といった抗老化のほか、病気の重症化予防や再発予防、発症予防を目的にした治療方法です。
細胞を除いたセクレトーム(分泌物)を利用するものです。
細胞を投与しないことで、保存、流通などの難易度がさがることから、細胞医療と比較して安価で提供できる医療になります。
米国では細胞医療と同様に、すでに一般臨床現場、足科のクリニックなど数百以上の医療施設で提供されています。
サイトカイン(Cytokines)は、細胞間のコミュニケーションを担うタンパク質の一種で、免疫システムや炎症応答に重要な役割を果たします。サイトカインは、身体の細胞間で情報伝達を行い、特に白血球(免疫細胞)において炎症、感染症、がん、自己免疫病などの対応に重要な役割を担う物質になります。
サイトカインは主に、インターフェロン(IFN)、インターロイキン(IL)、腫瘍壊死因子(TNF)などのサブグループに分類されます。それぞれが特定の細胞受容体に結合して、特定の細胞応答を引き起こすことができます。サイトカインは、バランスが重要であり、過剰なサイトカインの産生はサイトカインストームと呼ばれる病状を引き起こすことがあります。これは、免疫システムが暴走し、体内の組織を攻撃することが起こる状況です。
免疫や組織修復においてサイトカインは必須の物質であり、これらを移植・補充することにより抗老化につながる効果を得ようと研究が進んでいます。
エクソソーム(exosomes)は、細胞が分泌する小さな膜性の胞子(vesicles)で、直径がおおよそ30~150ナノメートル(nm)のサイズです。エクソソームは、細胞間コミュニケーションの手段として、細胞内のタンパク質、脂質、および核酸(DNA、RNA)などの生物学的分子を運ぶ役割を担っています。
エクソソームは、健康な細胞だけでなく、がん細胞やウイルス感染細胞からも分泌されます。これにより、情報の伝達が行われ、細胞同士が相互作用することができます。エクソソームは、免疫応答や炎症、細胞増殖や移動、およびアポトーシス(細胞死)などの生物学的プロセスに影響を与えます。
近年の研究では、エクソソームが様々な疾患の診断や治療において重要な役割を果たすことが示唆されています。例えば、がん細胞から放出されるエクソソームは、腫瘍の成長や転移に関与していることが分かっており、それらをターゲットにした新しい治療法の開発が期待されています。また、エクソソームの内容物を分析することで、疾患の早期診断や病状のモニタリングに役立つバイオマーカーとしての利用も研究されています。
当院での再生医療は主に関節炎または腱・靭帯の損傷、筋肉の損傷にたいする治療として実施しています。当院では細胞治療はおこなわずエクソソーム療法のみを提供し、細胞治療については他院への紹介やサポートを行っています。
エクソソーム治療は、関節炎の治療において興味深い可能性を持っている治療方法で、米国ではアスリートなどのスポーツ障害に起因する関節炎などに広く提供されています。
関節炎は、関節の炎症や損傷によって引き起こされる病気で、関節痛、腫れ、可動域制限、および関節の機能低下などの症状があります。関節炎には、リウマチ性関節炎(RA)や骨変形性関節症(OA)など、さまざまなタイプがあります。
エクソソーム治療はどちらのタイプの関節炎にも炎症抑制の面で治療可能性がある治療とされております。この治療においてエクソソームは、細胞間コミュニケーションの媒介として機能し、組織修復や炎症の抑制に関与する生物学的分子を運ぶことや培養上清に含まれるサイトカインの機能により、関節炎の炎症を抑制し、関節の損傷を減らす効果が期待されています。
近年の研究では、エクソソームが関節炎の病態に対して有望な治療効果を示すことが報告されています。特に、間葉系幹細胞(MSC)から得られるエクソソームは、炎症性サイトカインの産生を抑制し、関節の軟骨細胞の再生を促進することが示されています。
関節炎または腱・靭帯の損傷、筋肉の損傷に関する病気を診断され保険診療(標準治療)での治療を行っている方で、保存療法や疼痛管理(痛み止めの処方または処置)のみでそれ以上の治療が難しい方が痛みを軽減する目的で実施できる場合があります。
また、炎症性の病気の方でステロイド治療が難しい方などもステロイド剤を利用する治療の代替療法として適応できる場合があります。
人工関節置換術などの適用や手術を推奨されている方で、手術による治療実施の前にできる治療を考えられている方の場合、手術の代わりの治療として適応できる場合があります。
但し、関節自体や関節軟骨自体を元通りに再生する治療効果があるわけではなく、関節炎の炎症を抑制し、関節の損傷を減らす効果が期待されています。
人工関節置換や関節形成の手術をした後の治りがよくない方で痛みや腫れがひかない方等の場合、培養上清の投与により慢性的な炎症状況や組織修復などの支援として治療の適応ができる場合があります。
<注意>
再生医療は現在も研究段階の技術であり、エビデンスが十分な治療ではありません。治療としてはまずは標準治療での治療を検討したうえで、医師と相談の上、再生医療を検討するように当院では対応しています。
また、米国及び基礎研究等を通して副作用報告のない培養上清及び、投与に懸念される成分を含まないものを使用し、できる限り安全性に配慮しているものですが、注射による腫れ、感染、内出血のリスクがあります。
また、組織が魔法のように元にもどったり、言葉のように再生するような技術は現在実用化していませんので、そのような期待にお答えする医療ではありません。
治療にあたっては、医師のインフォームドコンセントでご納得できる場合に治療を適応いたします。
臍帯(赤ちゃんのへその緒)より幹細胞を採取し、培養・増殖した細胞から得られる培養上清液(サイトカインやエクソソームを含む上澄み液)を関節内または、損傷組織(腱など)に注入する治療法です。注入された培養上清液に含まれるサイトカインやエクソソームの成分は炎症や痛みの原因となる組織を修復・再生する働きがあります。抗炎症、組織修復増進を目的に投与を行います。
※当院では点滴治療はおこなっておらず局所投与しか行いません
1.再診時にご相談ください。再診の予定がない場合には相談再診をご予約ください。
再生医療の適応が可能かについて医師が診察を行います
2.インフォームドコンセントの実施
再生医療を行う際の注意事項、リスク、費用などについて医師から説明を行います。
治療費用については、投与回数により異なりますが、原則として3回以上の投与が必要になる場合が多いです。
(例)培養上清1回投与の費用(2ccの場合): 60,000円(税別)
3.治療申し込み
自費診療に関する治療の申し込み書およびインフォームドコンセントに関する合意をご提出いただきます。治療費用は全額前払いになります。
※クレジットカードによる支払いが可能です
4.培養上清治療外来をご予約いただき、治療開始となります
1.セカンドオピニオン診療相談をご予約ください。
再生医療の適応になりえるかまた、必要な検査情報などについてご案内、ご相談させていたきます。
※不足する検査情報がある場合、当院または他院での検査についてご案内します
セカンドオピニオン相談:30,000円(税別)
※相談時間が15分以上となる場合には、再度予約を取り直していただきます
事前に相談内容、他院の診断情報や画像情報などは48時間前までにメール等で当院までお送りください
2.再生医療初診外来をご予約
インフォームドコンセントの実施
当院にご来院いただき、他院または当院での検査情報を元に再生医療の適応について対面で診察を行い、再生医療に関するインフォームドコンセント
治療を行う際の注意事項、リスク、費用などについて医師から説明を行います。
治療費用については、投与回数により異なりますが、原則として3回以上の投与が必要になる場合が多いです。
(例)培養上清1回投与の費用(2ccの場合): 60,000円(税別)
3.治療申し込み
自費診療に関する治療の申し込み書およびインフォームドコンセントに関する合意をご提出いただきます。治療費用は全額前払いになります。
※クレジットカードによる支払いが可能です
4.培養上清治療外来をご予約いただき、治療開始となります。
さい帯は赤ちゃんのへその緒の事であり、最もフレッシュな細胞であり、安定的な確保が可能な細胞になります。臍帯は喫煙、飲酒、感染等の影響を受けにくい細胞であり、また組織上免疫寛容(お母さんと子供の血液が交わっても免疫拒絶がおきない)の機能を持つことから、免疫調整にたいして期待が持てる組織になります。脂肪などの組織と比べてもサイトカインも多いため、治療効果の高さが期待されています。
当院で使用する培養上清駅は、血管新生効果のあるHGFが多く抗炎症系サイトカインが多種多様に含まれます。また、上清液と血管内皮細胞を共培養(混ぜて培養して育てる)をしたところ、血管内皮細胞を劇的に増殖させ、血管内皮マーカーCD31、線維芽細胞マーカーCD44の発現量が向上したことを確認しています。血管内皮細胞(CD31)は血管新生の向上に、繊維芽細胞(CD44)はコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸といった真皮の成分作用(組織再生効果)に期待されています。
当院の培養上清は培養段階で一切の血清培地(動物の血液や人間の血液など)を使用しておらず、インスリン薬剤も使用していません。血清を利用することは未知の感染症や、狂牛病などのリスクがあるという事であり、このような薬剤は当院では使用していません。
多くの臨床提供されている培養上清にはインスリンが含有されているものが多く、明記していない製品にはほぼインスリンが含まれます(細胞培養のための培地にインスリンがふくまれるため)インスリンは糖尿病の治療薬で血糖値のコントロールに使われる薬剤であり、投与により、血糖値が低下しすぎることがあり、症状には、めまい、震え、発汗、頭痛、不安、めまい、不整脈、および意識消失などがあります。糖質の吸収と利用が向上し、エネルギー貯蔵が増加することによる体重増加や体内の水分保持が増加することによる浮腫の症状が出る場合もある薬剤ですが、培養上清液にどのくらい含有されているかを示さない製品も多くあることからインスリン含有の培養上清液は危険性が高く当院では一切使用していません。
PRP注射は、自己血液から採取したPRPを高濃度にし、病的な部位に注射する治療法です。PRPには成長因子や血小板が含まれています。関節炎や腱・靭帯の損傷、筋肉の損傷などの症状の改善が期待されます。採取から注射までの時間は短く、手術が必要ないため、日帰りで受けることができます。
血小板とは…血液を作る骨髄の巨核球という細胞から出来たもので、組織が傷ついたりしたときに血液を固め、止血する役割を担っている。血小板は成長因子を豊富に含んでいる。
成長因子とは…細胞の増殖・修復に働きかけるタンパク質の総称を指す。血小板が有するα顆粒は、PDGF(血管新生や細胞増殖)やVEGF(血管新生)などの成長因子を細胞外に放出する
当院では連携医療機関である、順天堂大学病院や東京メディサイトクリニックでの治療を紹介しています。
米国では近年、他人由来の間葉系幹細胞についてミニマムマニピュレーションを条件とした細胞の移植について合法化されています。
他人細胞の移植については大変厳しい規制があり、一般的な細胞であれば免疫拒絶などの重篤な副作用が発生する可能性があります。しかし、研究が進み、間葉系幹細胞(MSC)については免疫寛容であることがわかってきており、特別な遺伝子操作や培養を行わない条件下においてはこういった副作用がなくまた一定の効果も期待できる事から治療が可能になっています。当院ではGlobal Podiatry Clinicと連携の上、米国カリフォルニア州での治療をサポートしています。
当院では自己の間葉系幹細胞を培養して再度組織に移植する2種再生医療については推奨していません。これは、自己細胞のパフォーマンスは患者さんの年齢や疾患状況によって一定にならず、効果についてもばらつきが大変大きいものであるにも関わらず大変高額な治療であることからです。
細胞治療を実施する場合には、米国・日本でも治療効果の報告のあるPRP療法を基本に、米国などで正式に認可されている他人由来の細胞を利用した治療をご紹介していますが、いずれの治療法についても必ず効果を有するものではなく、現在も研究が続けられている治療方法であることをよくご理解いただいた上でご相談を受けています。