足に関する悩みには、男女差があります。当院での受診は70%が女性となっており、女性の方の足病の発症は多く、悩みも多いといえます。女性の足の変形は美容的な観点からもQOL(生活の質)を下げる要因になります。また、好きな靴、例えばハイヒールをはくためには普通に歩くのとは違う筋力が重要になります。いろいろな種類の靴を履く女性は、そのため筋力バランスが崩れやすく、靴の習慣と筋力バランスのコントロールにおいては、男性以上に気を付ける必要があります。
これらの理由から、足に関する悩みには男女差があることが分かります。ただし、足の悩みは個人差が大きいため、必ずしもすべての男性や女性が同じ悩みを抱えているわけではありません。足の問題に対処する際は、自分の体調やライフスタイルに合わせて適切な対策が必要であり、足病の原因は遺伝による傾向が強い事実があります。米国のように、足の違和感はできるだけ早期に受診し医師に相談するのが望ましいです。
女性の足の悩みはさまざまですが、特に女性に多い足病についてとりあげます。
靴のサイズや形が合わない、新しい靴を急に長時間履くことなどが原因で、女性は男性よりもファッションに気を遣う事から、足にあわない靴を履くことでの胼胝(たこ)や異常圧力の慢性化がおきます。
絶対筋肉量が少ない女性は、疲労や過度な運動(特に足の除圧サポートのないランニングやジョギング)、適切でない靴、体重増加、足の骨格異常(地面からの圧力の異常)などに弱く、かかとの痛みや足底腱膜炎を発症しやすいといわれます。
適切なサポートを提供する靴やインソールなどの医療用装具が必要な状態ですので受診が必要です。
外反母趾は遺伝的な要因が重要であり、ヒールを履くために発生する病気ではありません。
狭いつま先の靴の長時間使用は足の変形につながりますが、外反母趾は足の骨格異常の状態のまま関節がロックした状態で歩くことで発生します。
男性に比べて血管が細く、心肺機能の低い女性は、血行不良、低体温になりやすく、これに加えてホルモンバランスの変化、ストレス、栄養不足などにより冷え性を悪化させる場合が多くあります。適度な運動による血行促進、心肺機能の向上、温かい飲み物や食事、睡眠環境の改善、ストレス緩和、栄養バランスの良い食事が重要になります。
長時間の立ち仕事や座りっぱなし、血行不良、ホルモンバランスの乱れなどが原因で、足に水分が溜まります。また、女性は男性よりもリンパ浮腫の発症率が高いです。女性ホルモンがリンパ管の働きに影響を与えることや、妊娠、出産、閉経などの生理的要因が関与しています。
女性は男性に比べて静脈瘤の発症率が高いとされています。これは、女性ホルモンの影響により静脈壁が弱くなることや、妊娠による体重の増加や血流の変化が原因であることが一因です。
女性は骨盤の形状が広く、出産に適した構造のため、男性よりも骨盤の歪みが起こりやすいとされています。骨盤の歪みは、腰痛や股関節痛、足の痛みなどの原因となります。
女性は特に、狭いつま先やハイヒールの靴を避け、足に適した幅広で快適な靴を選ぶことが重要です。足底の異常な圧力をつくらないようにすることがなにより重要です。
ファッション的な靴を履く時間は限定して、着飾らなくてもよい時間には、足に優しく姿勢を保持できる装具などで補正した足環境とするように、足を休ませるコンセプトが重要です。
また、靴を選ぶ際は適切なサイズや幅を選ぶことが重要です。新しい靴は徐々に履く時間を延ばして馴染ませるようにし、靴擦れができやすい部位には、事前に絆創膏や防水テープを貼ったりすることもよいアイデアです。
男女ともに、定期的なフットケアが重要です。足裏の角質ケアやマッサージ、ストレッチなどで、足の筋肉や靭帯を柔軟に保ち、病気の予防に役立てます。皮膚が固い部分は胼胝(たこ)ですので、削ることも重要ですが、原因となる骨格異常を治療することがより重要になります。→フットケアはこちら
筋肉を鍛えることで、関節の負担を軽減できます。足病は、歩き方や足の変形が原因となるため、筋力の向上は足への負担を減らすことにダイレクトに役立ちます。また女性は、骨盤底筋や腹筋、股関節の筋力を鍛えるエクササイズが効果的です。これらのトレーニングは、反り腰の姿勢の改善に役立ちます。骨盤底筋群のトレーニングは尿もれの改善につながる効果が期待できます(効果は尿もれの病態によります)。
適切な体重を維持することは、脚の病気の予防に役立ちます。特に女性は妊娠や出産などで体重の変化が大きいため、体重管理が重要です。体重が重くなるとその分、地面から帰ってくる床反力が増え、足や関節に大きな負担を与えます。
足への圧力を放置することで、骨格の状態によっては足の指がまがってきたり、外反母趾や内反小趾といった骨の変形が進行します。
早期発見・早期治療が脚の病気の予防や治療に役立ちます。男女ともに、定期的に医療機関でのチェックを受けることが大切です。足は毎日観察して違和感や胼胝(たこ)ができたら足病のサインですので受診の目安です。痛みを覚えてから受診をするのは、虫歯を放置して虫歯が傷んでから歯医者にかけこむようなもので、予後に影響します。
女性は特に足病になりやすい傾向があり、筋力量と骨格変形、ホルモンバランスの変化による影響が大きくなります。特に出産というイベントが足に与える影響は多く、産前産後の体形変化の際に足や股関節の骨、関節の姿勢が大きく崩れ、その後の産後体形が崩れる原因を作ります。
米国では産前産後で何度も姿勢変化にあわせて装具による矯正を行い、産後体形を産前の状態のまま維持するように治療介入されています。
日本ではまだまだ、出産前後の装具などによる補正やリハビリテーションが一般的はないのですが、出産後期によるホルモンバランスの変化で女性は靭帯がゆるむこと(出産のために身体がゆるむ必要がある)で骨格の変形がしやすい状態に必ずなります。
このタイミングで姿勢や骨格の変化をつくらないことはその後の足と歩行の維持に大きな影響を与えます。
このように、女性の足予防には医療的な介入が必要な場合が多く、早期に介入することが重要で、歯のように適切なケアをすることで足は健康を維持しずっと歩行を維持することが可能です。男性は女性よりも寿命が長いにもかかわらず、歩行を失うリスクは男性よりも高いため足のケアはより慎重になる必要があります。
ハリウッドの女優も足のケアにとても興味が高く、ハイヒールを履かない時間を増やし足を休ませるスニーカーでの歩行では装具による矯正を行っている場合がほとんどです。
靴を目的別に履き替えることが当たり前であり、また、筋肉トレーニングによる姿勢の維持への努力も怠っていません。
このようにすることで、いつまでも美しく健康でいられる可能性が大いに高まります。